azulicat/『8th GOD's works ~八神健同人短編集~』感想

Created 2023-02-07 15:00 Modified Tue, 07 Feb 2023 15:00:00 +0000
  1169 Words

https://www.mangaz.com/series/detail/125251

マンガ図書館Zで無料で読める漫画。非常によかった。名前の通り短編集だけど、どれもジャンルが似通っておらず面白い。他の作品も目を通したけど、全体的に伊勢田作品っぽい雰囲気もあり。

作品別感想

  • 「よい子悪い子」(1998年)
    • 最初の話、割とこの一発目でしっかり引き込まれた。全部読んだ今となっては特に目立った作品ではなかったなと思うが、登場人物を可能な限り絞ってきちんとまとまっている。この人の作品の特徴として、「しっかり終わる」ことが少なく余韻や謎を残してフェードしていく感じの終わりが多い。これもその一種だが、不思議と消化不良感はない。男の子が一言も喋らないのに魅力的なのはやはり漫画力が高いからだと思う
  • 「私のゾンたん」(1999年)
    • ちょっとジブリっぽいかも。不気味さとほのぼのさが同居した話。これも説明が少なめだがキャラの動機がすべて善に基づくので心地が良い。
  • 「航平の海」(1999年)
    • ゆるやかに超常が持ち込まれる感じはやっぱり伊勢田作品っぽい。 最初の引き込み方がうまく、散らばめた謎は丁寧に回収するのではなく火力強めのパッションで燃やし尽くすという雛形がよく現れている。
  • 「awake」(1999年)
  • 「私は教祖さま」(1998年)
    • この二本は本書の中でダントツで好き。どっちもメチャクチャ良い。awakeは個人的に超絶好みで、「私は教祖さま」は割としっかり一般受けしそうな話。場が場で世が世なら今のスパイファミリーの位置にこれがあってもおかしくないと思うレベル。どちらもクオリティたかし。awakeはザ・同人って感じだが私は教祖さまは少年・少女漫画でもいけそう。
  • 「鏡の国のジェニファー」(1999年)
    • ホラー雑誌に寄稿したらしく、結構しっかりホラー。ハッピーエンドではないが後味は悪め。だがこの悪さは作品としての完成度を毀損せず、むしろ適切だと思う。
  • 「ふわふら~勇者のコイン~」(2000年)
    • 全体的にベターすぎて攻めっ気が薄い。読めなくはないが評価低め。
  • 「Snowman,from July」(1999年)
    • 投げっぱなし多めの本書の中でも随一の投げっぱなし具合。が、どうやら元ネタがある外伝作品らしく、そっちを読めばなにかわかるのかも。消化不良なのが気になるが作品の雰囲気は好き。これも伊勢田作品っぽさがかなり強い。
  • 「祭の季節」(2004年)
    • インスピレーションで急いで書き上げたというだけあって熱量を感じた。相変わらず語りが少ないのだけど、今回はそれがラフ絵と併せて作品の空気感をかなりいい塩梅で醸成していた。お気に入り目。

総評

かなり良かった。投げっぱなし気味と書いたが、適当にやってるわけではなく意図的に作品のエッセンスを調節する目的でやってるのがわかるので嫌悪感はない。個々の作品が際立っていて全体的に純粋な漫画力が高いと思わせられる本でした。



Related